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コラム NIS2指令とは?要件とサイバーレジリエンスの必要性を紹介


NIS2指令とは?要件とサイバーレジリエンスの必要性を紹介

世界中でサイバー攻撃のリスクが高まる中、海外拠点を持つグローバル企業にとって、包括的なサイバーセキュリティ対策の実施が急務となっています。EUが策定した「NIS2指令」は、サイバー攻撃の被害を最小限に抑える「サイバーレジリエンス」の強化を目的とし、セキュリティ強化のための具体的な指針を示しています。

本記事ではNIS2指令の概要やサイバーレジリエンスの重要性を解説し、具体的な強化手法や事例についてご紹介します。

1. NIS2指令とは

NIS2(Network and Information Systems Directive 2)は、2022年にEU(欧州連合)が策定したセキュリティ規制です。ネットワークや情報システムを利用する幅広い業界に対し、サイバーセキュリティ強化と情報保護を義務づけています。特に社会的・経済的に重要な役割を担うインフラや企業に対して、サイバー攻撃によるリスクの軽減と対応能力の向上が求められています。

基準と適用範囲

NIS2指令では18の産業部門が対象とされており、企業は「主要エンティティ」と「重要エンティティ」に分類されます。

基準と適用範囲

以下の、いずれかの条件を満たす企業は、NIS2指令の要件を遵守する義務があります。

  • 従業員が50人以上
  • 年間売上高が1000万ユーロ以上
デジタルサービスプロバイダーは例外適用

対象企業には具体的なサイバーセキュリティ対策の実施が義務化され、遵守を怠った場合は、制裁金や経営者の刑事責任が問われるなど、厳しいペナルティが科されます。

NIS指令との違い

NIS2指令は2016年施行のNIS指令をもとに、より包括的かつ強力なサイバーセキュリティ体制の構築を目指して設計されています。主な変更点は以下のとおりです。

  • リスクマネジメントの強化
  • 報告義務の厳格化
  • 違反に対する制裁措置の導入
  • 国際的な連携の強化
  • 監視基準の標準化
  • 対象産業の拡大

NIS2指令により、欧州全域でのセキュリティ基準の統一と各国間の協力のさらなる推進が期待されています。

2. 海外拠点に重要なNIS2の要件

海外拠点に重要なNIS2の要件

グローバル企業にとって、NIS2指令の要件は戦略的な対応が求められる重要な課題です。本章では、海外拠点担当者が特に注目すべき3つの重要項目を解説します。

リスクマネジメントの強化(21条)

NIS2指令ではリスクアセスメントの実施や脅威の管理、インシデント対応フローの整備、定期的なセキュリティ監査などによるリスクマネジメント体制の強化が求められています。サイバー攻撃や災害発生時に迅速な検知、対応、復旧ができる仕組みを整備する必要があります。

報告義務の厳格化(23条)

NIS2指令ではインシデント発生時の報告に関して、厳格な要件が設定されています。この要件は、国や関係機関と情報を共有することによるサイバー攻撃の拡大および再発防止を目指しているため、各拠点は迅速かつ透明性の高い情報共有を実施する必要があります。

項目報告の制限時間報告内容
早期通知

24時間以内

  • 不法行為または悪意のある行為の疑いの概要
  • 国境を越えて影響を及ぼす可能性があるか
インシデント通知72時間以内
  • 初期評価情報(重大度、影響範囲)
  • セキュリティ侵害インジケーター(IoC)の詳細
中間報告書必要に応じてCSIRT(※)から求められた場合に最新情報を提供
最終報告書1か月以内インシデントの全体的な評価や対応状況
CSIRT(Computer Security Incident Response Team)=セキュリティ事故対応チーム

国際的な連携の強化(10条)

海外拠点によるセキュリティ対応には限界があるため、NIS2指令は各国にCSIRTを設置し、国境を超えた協力体制を構築することを推奨しています。複雑化するサイバー攻撃によるインシデントの拡大を防止し、単一の拠点や企業、国では対応しきれない課題に協調して取り組む枠組みの整備が求められています。

国際的な連携図
出展:EU NIS2指令概要(経済産業省)
https://www.jraia.or.jp/members/uploads/files/230526_METI_NIS2.pdf
出展:EUR-Lex 文書 02022L2555-20221227
https://eur-lex.europa.eu/eli/dir/2022/2555 

3. サイバーレジリエンスの必要性とメリット

近年のサイバー攻撃は業界や規模を問わず、あらゆる企業が攻撃対象となっています。ランサムウェアや標的型攻撃、サプライチェーン攻撃といった脅威は、業務停止や情報漏えいといった深刻な被害をもたらしますが、高度化する攻撃を完全に防ぐことは難しいのが現状です。これらの攻撃への対策として、被害を最小限に抑え迅速な復旧を可能にする「サイバーレジリエンス」の基盤構築が不可欠です。

サイバーレジリエンスを確立することで、サイバー攻撃を受けた場合でも事業の中断を最小限に抑えられます。これによって企業の経済的損失や信用の低下を防ぐことで、競争力の維持を図ることができます。

サイバーレジリエンスを実現する効果

サイバーレジリエンスを実現する効果

サイバーレジリエンスの構築には多大な労力を要しますが、企業が得られる効果は多くあります。

迅速な対応で事業の被害を最小化

サイバーレジリエンスにより、インシデント発生時の迅速な対応が可能となり、被害の拡大を防いで事業への影響を最小限に抑えられます。

顧客からの信頼向上

NIS2指令への準拠とレジリエンスの強化は、取引先や顧客からの信頼を向上させ、企業価値を高めます。

法的リスクの回避

各国の法規制に則った体制を構築することで、法令違反による罰金や制裁を回避できます。またサプライチェーンでは、取引先との契約でセキュリティ要件を満たしていない場合、ペナルティを受けるお恐れがあります。サイバーレジリエンスを確立すれば契約違反リスクを最小化することができ、競争力の維持につながります。

4. サイバーレジリエンス強化のポイント

サイバーレジリエンス強化のポイント

サイバーレジリエンスの強化には、NIS2指令によるリスクマネジメントを中心に「組織」と「技術」の双方にアプローチする施策が必要です。以下で具体的な強化ポイントを解説します。

リスクアセスメントの実施と対策の優先順位の設定

まずリスクアセスメントによってIT資産の棚卸しを実施し、すべてのシステムやデータを把握した上で、それぞれの重要度を評価します。その上で、リスクの高い領域から優先的に対応を進め、企業の事業継続性を確保します。

組織部分の強化

海外拠点を含むすべての拠点で浸透する包括的な対策を行う際は、以下の4点が重要です。

レポート体制の整備

インシデント発生時に統一フォーマットで迅速かつ正確に報告できる仕組みを整えます。
連絡手段を明確にし、報告手順を標準化することで、情報共有のスピードと正確性を向上させましょう。

インシデント対応フレームワークの構築

組織全体で統一されたインシデント対応フローを策定し、対応を迅速に行えるようにします。本社主導でセキュリティポリシーや行動規範を策定し、「まず被害を受けたシステムを隔離する」「次にデータ漏えいの範囲を特定する」など、対応手順を標準化します。

従業員の教育とサプライチェーンを含めたセキュリティ管理

従業員一人ひとりのセキュリティ意識を向上されるため、定期的なセキュリティ研修や教育を実施しインシデント対応フローを浸透させます。また、サプライチェーン全体での共同訓練により、パートナー企業と連携してリスクに備える体制を整えます。

業務継続計画(BCP)の策定

インシデント発生後も業務を継続できる計画を作成し、全社で共有します。例えば、重要システムの復旧の際、クラウド環境のバックアップデータを活用するなど、復旧手順を整理します。

システム面の強化

柔軟で堅牢なシステム基盤を構築するためには、以下を実施します。

定期診断の実施

脆弱性スキャンを定期的に行って新たなリスクを早期に発見し、速やかに修正します。例えば、毎月決められたスケジュールで脆弱性スキャンを行い、発見されたリスクに対して修正パッチを適用します。

ネットワーク分離

ネットワーク分離やセグメンテーションを実施し、重要資産へのアクセスを制限して、システムの可用性を確保します。例えば、社内ネットワークを「業務用」「管理用」「来客用」に分離し、外部からの侵入を防ぎます。

ツール導入による自動化

SIEM(ログ分析基盤)やEDRなどのツールを導入し、リアルタイムでの脅威検出と対応を実現します。AIなどを活用した監視システムで24時間の監視体制を構築し人的負担を軽減しつつ、セキュリティ体制の効率化を図ります。

5. まとめ

EUのNIS2指令に基づいたサイバーレジリエンスの強化は、単なるセキュリティ対策にとどまらず、グローバルレベルの事業に対するリスク最小化と、競争力維持を目指す重要な取り組みです。NIS2指令に準拠することで、企業は法規制への対応とともに、顧客や取引先からの信頼を強化し、グローバル市場での優位性を確立することが可能です。

サイバーレジリエンスの基盤構築には、組織とシステムの両面から包括的かつ継続的な取り組みを進め、迅速な対応と復旧力を備えた体制を整備することが重要です。KDDIでは、お客様のNIS2指令への準拠や、サイバーレジリエンスの構築をサポートします。ぜひご相談ください。

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